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剱岳早月尾根



ルート図

行程

  • 5月2日 静岡・浜松・高山
  • 5月3日 高山・富山・馬場島・早月尾根1820m
  • 5月4日 1820m・2830m
  • 5月5日 2830m・剱岳山頂・馬場島・美濃太田
  • 5月6日 美濃太田・浜松・静岡

メンバー

朝日、真先、平気

途中カメラが壊れたため、3日までの写真しか載っていません。 後日、他メンバーが撮った写真を載せておく予定ですので、興味がある方 はまた来てください。ご迷惑をお掛けします。(平気)


剱の山頂

入山3週間も前に登山届けを出さなければならない面倒くさい積雪期の剱岳。 雪深く、夏にさえ雪渓が残っている剱岳。又、砦の様、上界を支配する岩峰を 持つ剱岳。西からアプローチすると、信じがたいことに東側から見たよりも格好よく 見える。

今回剱に向かったのは、積雪期の様子を観察したくて、またできれば、岩を登攀、 天気に耐え、という試練を経て充実した山行をこなし、登山者として一歩進むのが 目的であった。

しかし残念!天気も非常によくて、これといった岩場も行けなかった。でもその代わり、 メンバーの一人が急病になったという、緊急状況が体験できた。最後に苦を善に換え、 日本一の滑り台が下山できた。

text:平気 photos:朝日、平気


5月2日 曇り

静岡ー浜松ー高山

レンタカーで行くつもりだったが、連休のため取れなかった。そこで午後電車で出発したが、 静岡から来た真先からメールが来て「ピッケル2本持ってない?」んなわけないから、 ピッケルを忘れた真先が部室へピッケルを取りに戻った。そして新幹線で浜松まで来た。 ピッケルを忘れないこと。

それからは問題なく高山まで乗った。経由はちょっと変だったが。金山・多治見・美濃太田・ 高山。高山駅近くで駅ビバ。


5月3日 快晴

高山‐馬場島10:30 - 取り付き 11:30 - 松尾平 12:00 - 1800m 15:30

雪壁と真先

上市・馬場島のタクシーは7千円くらいだった。着いたら、まず登山指導センターへ 計画書を確認しに行った。そして、車で来ていないから「別山経由で室堂に降りる」、 また、天気がよさそうなので「チンネか6峰を登攀する」、という計画変更が可能か と聞いた。受付の人が「自分の判断でやって、但し下山したら必ず連絡を取ってください」 と、許可してくれた。厳冬期・春季登山の話もしてから、取り付きへ向かった。

出発がかなり遅くなったが、いい調子で何人かの踏跡で階段状になっていた登山道 を登った。アイゼン、ワカン、コート、帽子、不要。サングラス、日焼け止め、必要。 幕営は、1800mくらいの広い場所で、前日誰かが使ったテント跡を乗っ取った。 天気がよくて、水作り、飯炊きを外で行った。

写真を撮っている最中、カメラの電源ボタンが壊れ、使用不能となった。

テンバ、水作りと凶暴な朝日

5月4日 快晴

5:00 - 早月小屋 7:30 - 烏帽子岩 9:30 - 獅子頭手前(2830m) 11:30

剱の旭

早月尾根の朝 朝3時におきて、美味しい〜(YO)マルタイを食べてから登り開始。1900m を越えたら本峰、小窓の王が視野に広がった。これは早月尾根の素晴らしいところ である。樹林帯があっても、尾根が急なおかげか、好天なら本峰が常に見える。 さて、早月小屋で休憩をした。計画はもう、熊の岩までとしていた。何となく、 アイゼンでの差稜線は著者を含めてこのメンバーで、まだ早いかと思って、 その代わりに6峰のAフェース、雪の状況がよければCかDフェースも登ろう と考えていた。

烏帽子岩を登るとき、上から懸垂待ちの人が8人もいた。「ロープだそうか」 と他のメンバーに聞いたら、前に上った人もロープ無しで登ったからか 「いいんじゃない」との答え。だがロープを出さなかったのは、間違いだった。

先行パーティーは左の急な雪壁を登ったが、懸垂してくる人と同時に登ろうとしてもしょうがない から、右側の岩場を先に登った。

烏帽子岩の草付 確かに下から見たところも、ちょっと脆くは見えたが、 実際に行ったら、烏帽子岩の上部はザックの底に一週間潰されていた動物ビスケットだった。真先と朝日に 来るなと叫んだが、もう登り始めており、真先がクライムダウンに高すぎる位置にいた せいか、同じルートを登ってきた。朝日が左側の雪壁にトラバースした。

自分で脆い岩を上まで登って、みんなどこにいるだろうとかなり心配していた。これは 他のメンバーはハング下にいたからである。 20分くらい経てば、真先がハングの右から顔を出し、脆さでいうとルートの核心部についた ことが分かった。そして朝日が 雪壁ルートの傾斜80度の上部の手前についていて、クリップしていた。3人パーティーで ロープは2本持っていたが、1本は真先が持っていて、1本は朝日が持っていた。「誰か 一人こっちへ登って、他の一人を助けるから」と言ってみたが、どちらも動かない。仕方なく、 朝日のところへロープを取りにクライムダウンするしかない。しかしその時、 上から別パーティー二人が降りて来て、どうせ懸垂するつもりだったのでロープを貸してくれた。 恩糸を使って、朝日と真先を助け出すことができた。

では、烏帽子岩を越えたことろ。先頭に出していた朝日が、疲れたという。少し進んだら スピードが半端なく落ちる。一歩一歩苦労しているらしい。聞いたら風邪を引いた かもと。休憩して、熊の岩までいけるかと尋くと、何とかなるだろうという感じ。 その時居た場所は、早月尾根の上部で狭くてやせており、悪天、風がぶち当たるところだから、 もし病気になって、何日かの停滞になるかも知れないから、とにかくまずい。つまり 選択肢には、熊の岩まで行くか、早月小屋に戻るかとがあったが、戻るのに急な雪壁を 下降しなければならず、スリップしたら終わりだ。

しかし、1時間もかけて標高差50mくらい進んだら、目の前の本峰まであとわずか170m 登りのところ、動けなくなった。時間はまだ、昼さえすぎていないから、とりあえず 少し休んでもらって、近くに幕営できる場所ないかと探しに言った。獅子頭を越え、 本峰に登ったが、熊の岩までの距離を見たら、普段なら一時間もかからないだろうに 今の状況ではとても無理だと分かった。しかし頂上付近の雪を削れば、風に強い よいテンバができるし、雪洞さえ作れる。

そこでみんなが待っていたところに戻り、調子を聞いたら山頂まででも無理だと分かった。 下降も同じく。空身にしても。調子から診断したところ、致命的高山病にはまだ早い (入山してから2日目)から、もとに風邪があって、それに空気の薄さ、過労、 日焼けが加えたコンビネーションだろうと考えた。無理にちょっと危険なところを下降しなくて、 休めば何とかなるだろう。 そこで休んでいた狭くて風当たりが悪そうなところの雪を掘って、見た目上いい幕営地が できてテントを張った。


5月5日 快晴

7:30 - 頂上 8:00 - テンバ 8:30 - 早月小屋 10:30 - 松尾平下 13:30 - 馬場島 - 富山 - 美濃太田

頂上日の朝 朝、様子を伺って6時まで寝た。朝ごはんを作り、朝日も何とかなるかもと言ったので三人で 頂上ピストンに向かった。(もはや、早月尾根を何とか下山する以外の計画は論外となっていた。)

ルンゼを降りる 獅子頭やカニのハサミの通過は早月の核心部というが、今回は風弱く、他パーティーの踏み跡があったので、 比較的安定した感じでトラバースできた。難なく山頂までいけた。頂上から見た景色は前日より ぼんやりしていたが、それでも剱岳付近・立山当たりはよく見え、5月の癖にまだ完全に雪に覆われ、 心を喜ばすものであった。今度ぞ、剱周辺にてもっと長い縦走・クライミングを試みたいという意欲が 強く湧いてきた。

トラバース

トラバース

下降は、頂上とハサミの間にあるルンゼが状態よく、懸垂せずに通過した。テントでしばらく休んで、 先に通った人からペッツルのヘルメットに関するアドバイス(ストラップが本体に着けられている部分が 縁に近すぎて、ひび割れができやすいと)をいただいた。朝日は調子が少しよくなったらしく、「じゃ、 少なくとも小屋まで降りよう」と決め、下山準備をした。

烏帽子岩は懸垂待ちになった。無理もないな。待っているうち、二人のクライマーがダブルアックス でクライムダウンしたが、雪がまだ硬かったから私達は懸垂で降りた。小屋からは、朝日がまだ体調が 壊れたが、休憩たっぷりしながら1900mまで降りた。

滑り台をすべる真先 あそこからはどんなに素晴らしくて楽しい下山方法ができるだろうか!東京ディズニーランド、 大阪のユニバーサルスタジオなど、遊園地は容易に負ける!雪質がちょうどよく、急斜面が滑り台に化した。 これをやったら朝日も元気を出したらしく、快適だった。1600mピーク辺りからは、 ずっと尻滑りで降りた。本記事の「5月3日」のところ、真先が登る斜面の写真を見て頂きたい。 それは全部、滑り台だ。筆を振って表現すると、早月尾根を松尾平へ下りるのではなく、 その東側へ森と川に落ちる広い雪面を、標高差およそ800mの滑り台バリエーションルートにした。 楽しい〜

川に着いたら、全員が元気で、しかもものすごい日焼けをしてしまっていた。安いこと。 ラッキーなことに馬場島では予約していないのにタクシーが待機していて、 運転手にそばを食べさせてから上市へ戻った。駅近くの町営温泉でタクシーから降りたが、 同温泉は600円がしたが、風呂の種類が多くて、サウナが暑くてなかなかよかったと思う。

リフレッシュしてからもっとも額安い高山線で帰ることにし、上市・富山・高山・美濃太田まで 電車で、美濃太田駅近くの公園で駅ビバ。実は美濃太田は4年前に、訪れたことがあって、 凄く懐かしかったが、それは別の話である。


5月6日 晴れ

美濃太田 - 多治見 - 浜松 - 静岡

電車で問題なく帰った。いろいろあった合宿、お疲れ様 バイバイ。


学んだこと

山へ行くとき、天気などの状況が完璧でも、何か起こるがわからない。今回の風薬、 体温計など持っていかなかった時こそ、メンバーが病気になって偉い状況になってしまった。 今回は結果OKで、そして連休のため他の登山者もいて、小屋もあったので、病気が悪化した としても何とかヘリを呼ばずに済んだと思う。が、状況がもっと厳しい冬山では、 いくら体力、技術トレーニングをしたところで、誰でもが病気で倒れる可能性がある。

幸い、日本では風邪以外の伝染病が少ない。冬山の水作りでも、大した細菌が水に入らない。 高山病も3000mはそんなに簡単に発生しない。ただ問題は下界で引いた風邪やインフルエンザ等の ウィルスで、例えば行きの電車で感染されたら、発病までは2〜3日もかかりうることから、 例えば登山行為による過労に伴う免疫の弱化が起きたら、パーティー全員が山に入って3日目に 病気にかかる可能性がある。これからは、基本的抗生物質や風邪薬などを持って行くべきだろう。

また、烏帽子岩を登ったときにロープを出さなかったのも失敗だった。下から見た限り大丈夫そうで、 他のパーティーがロープを使わずに登っていても、垂直に近い雪壁の登攀中は、 著者みたいにちょっと頭がおかしい人でないとビビッてしまう。

全体的にいうと、事情があって今回岩場(まぁ、烏帽子岩は面白かったが)に行けなかったにも 関らず、楽しくて勉強になった山行ができた。 そして剱・立山・毛勝周辺をまたさまよいたい気持が強まってきた。


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