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山行報告:春合宿2006:突坂尾根&白馬アイスクライミング



ルート図

行程

  • 2月16日 静岡・魚津
  • 2月17日 魚津・宇奈月・突坂尾根832m
  • 2月18日 832m・突坂山・1500m
  • 2月19日 1500m・猫又山2300m
  • 2月20日 猫又山・清水岳・旭岳・白馬山荘
  • 2月21日 停滞(白馬岳ピストン)
  • 2月22日 白馬山荘・白馬鑓ヶ岳山頂下(引返し)・白馬岳・白馬大池
  • 2月23日 白馬大池・栂池スキー場・白馬・静岡

メンバー

桐山、中岡、平気


冬合宿に計画していた北アの末端の山登りを春合宿で実現する。また、ルートにもっと長い尾根 を選び、予備日含めて17日間もあるので、白馬岳から後立山連峰を鹿島槍ヶ岳までと、南へ縦走する。 尾根のラッセルや雪稜、不帰、五竜、鹿島槍の岩稜といったいろいろな様子があって 変化に富んだ計画であったが、結局山に行ったら白馬からの敗退で終わった。

面白い出来事が多かった。まず北陸・魚津の雨で出発を1日遅らせた。大糸線の電車が一部バス代行 になっていた。アプローチの黒部峡鉄道のトンネルが天井が低くザックが痛んだだけではなく膝が疲れた。 入山初日、桐山が滑落した。二日目、中岡と平気が滑落した。三日目、雪崩そうな斜面の登攀。 四日目いよいよ吹雪いてきて、旭岳周辺の広い雪原で視界ゼロ。平気が雪庇を踏んだ。五日目、桐山の体調不良で晴れた日の快適な停滞。 六日目、白馬より南へ向かい、ビレーが不可能なアイスクライミングとなったため計画中止を決め、 強風の中白馬岳へ引返した。

これを書いているのは敗退してから一週間。計画通り行けば、今日までは山にいたと思う。 悔しい気持が薄くなった今、結果的に、みんなが生きて帰れたことを考えると、 引返すのが正しい選択であったかもしれない。 元々計画作成が失敗し、計画の段階でメンバーの経験等にもっと気を配るのであった。 自分が岩場、難しい山へ行きたいからといって、今回のような、何とかしようがどうにもならない、 ロープが使えない場面がこれからも出るだろう。そのため、合宿という大きな計画、 大きな成長の可能性を持つ場に備え、しっかりと雪上訓練、体力トレーニングを行なって行きたい。

総合的に言うと、メンバーそれぞれ何かを得ることができ、そして少なくとも私にとっては 少し充実感に欠けても、非常に楽しい山行であった。北アルプスのほぼ北末端の二月:一週間 生活し、好天に恵まれ、雪質がよく、氷が面白く、景色が素晴らしく、日焼けが酷く。。

また、白馬周辺の氷斜面やその支点が取れない特質が登攀の課題としてなかなか面白くて、 また機会があれば行きたい、楽しみたい、今度こそ越したい気持はある。

text&photos:平気


2月16日 雨

私が浜松から名古屋経由で、中岡と桐山が静岡から身延経由で電車に乗り、 松本で合流することにした。私の電車が遅れており、大糸線の連絡に間に合うかと心配したが 結果オッケー。南小谷ー糸魚川間は積雪でバス代行になっていた。 魚津JR駅は夜間戸締りだが、地鉄の駅は無人駅で戸締りがなく、ホームの小屋でビバークした。 ちなみに新魚津駅の入り口は入り口として面白い。


2月17日 雪

宇奈月 7:00 - 取り付き 10:00 - 832m 15:00

朝7時くらい宇奈月温泉に着き、登山届を出したら黒部峡鉄道の線路へ。黒部ホテル手前から 鉄道の橋を渡り、線路沿いに歩いた。歩ける幅の歩道が除雪されており、歩行者トンネルに入る までは快適だったが、背が比較的に高い人間で、ザックも高いのでトンネルはちょっと大変だった。 ところどころ膝を曲げて、ザックのトップが天井のコンクリートやカビにやられながら通過した。 なかなかないアプローチで、合宿の楽しみの一つでもあったが、がっかりしなかった。
ワカンをつけて笹平から雪崩の跡を登り、樹林の中の雪質がちょっと不安定かなと思いきや 桐山が滑落した。ロープを一回出した。尾根上に出たら問題なく842mの広い場所まで ラッセルした。といいたいところだが、富山県のラッセルってこれ??と思った。 15、16日の降雨で、雪が融けたり固まったりしていた様で、 膝くらいまでもないかという軽ラッセルであった。 予想していた腰か胸までのラッセルとは程遠いものだった。


2月18日 快晴

6:30 - 突坂山 10:00 - 1500m 17:00

ラッセルの軽さをまだ完全に信じないままに登ったが、これはこれで有難いかと思って 突坂山に登った。計画では、二日目は突坂までだったが、朝10時に着いた。もちろん前へと 進み、次の急なくだり、狭いコルまでロープを出し、ずっとビレーしながら降りた。 コルに1482mの小ピークがあって、これをコンテで登り出したが、しばらくしたら先頭の中岡 が滑落した。かなり下まで行って頭をぶったが、大した怪我や損失はなく、サングラスを 取り戻したらビレーをランニングビレーに変え、登りだした。そこで2ピッチ目、今回はリードの 平気が滑落した。ビレーされてすぐ止まったが、山で滑落したのが始めてで、自分が 落ち得ないという妄想から解放された。 続いて数多くの狭い、細長い個所を超えて、テントが張れる尾根が広いところに着いたのは午後5時で、かなり遅かった。 このコルを越えるのに好天でも7時間がかかったことから、ロープを使うなら かなりの時間的余裕を持って向かいたいところである。

ラッセル訓練 突坂山から 雪壁登攀の桐山 突坂尾根から朝日岳

2月19日 快晴

6:00 - 1966m 10:00 - 猫又山 14:30

軽いラッセルが続いて、難なく大きな雪庇をかけた稜をつんで行った。1966m付近から は面白い下降で、そのコルからの登り返しは雪崩そうな雪面であった。ランナーを取りながら コンテで丁寧に登った。雪崩なかった。突破したところで桐山のワカンが壊れていたことに 気づき休憩しながら修理した。午後になったら雪がぬれた砂糖みたいなものとなり、ラッセル が重くなった。だが猫又山の少し前から雪面がクラストしてきて、山頂は地肌が出ていた。 しかも風強かった。テントは結局山頂を過ぎたところで、北への落ちる尾根の上部にある 樹林帯の中に張って、今回の風の向きでは快適だった。

雪稜 雪の世界1 雪の世界2 剣岳

2月20日 晴のち吹雪

6:40 - 清水岳 8:40 - 主稜線 15:30

朝からアイゼンで清水岳に向かった。この区間は北東の雪庇が巨大で、南西側のクラストしていた樹林帯 をトラバース気味で登った。清水岳山頂は広く、風が強かった。しかも南の槍・穂高の方が少し ぼんやりしていて、天気が数時間後悪くなることが分かった。吹雪いてくる前に白馬に到着したいと思って、 ペースを早すぎてしてしまい、桐山がかなり疲れちゃった。
清水から旭2733mまでは、斜面が氷で覆われ、北側に少し分かりにくい雪庇がかかっていた。平気が 一つの肩を踏んで胸まで中に落ちた。 2636mのピークの直登は少々怖く見えたが行ったら無難だった。 このピークを過ぎたら空が真っ白となり、雪が吹いてきた。 旭岳のリッジまでは視界がゼロで、地図とコンパスで広い稜線を歩いた。夏道のトラバースを せずに旭のリッジを登って、白馬側のリッジを下降することにしたが、下降時は氷の傾斜が強く、 スタンディングアックスビレーをしながら降りた。コルは何も見えなく、北にも南にも行きすぎないように 東へ向かったら傾斜が出て、ちょっとしたら登山道に出た。風も雪も激しかったので、 頂上宿舎の影にテント張れるかと調べに行ったが、周辺が急傾斜の氷の滑り台になっていて、 下降する途中滑落したが、滑落停止が効いた。これも冬山に何回も行っているのに、 本場で使ったのは初めてという技術だった。 しかしアプローチの大変さを考えて頂上宿舎をやめ、白馬山荘の後ろにテントを張った。

猫又山からの旭岳と白馬岳 もう雪ばっかり

2月21日 快晴
前の夜、桐山が体調不良を告げ、そこで21日を停滞日にした。白馬岳をピストンし、 日焼けし、物を乾かした。暖かくて白馬山荘屋上上の氷がどんどん融け落ちていった。 融ける氷や雪から水をとった。できるところ雪上訓練をした。

快適な停滞日 白馬から旭と猫又方面 白馬から南 白馬山頂

2月22日 晴時々曇り

6:40 - 白馬鑓 9:30 - 白馬岳 12:00 - 白馬大池 16:00

白馬より南は西と同じく、斜面が薄硬い氷に覆われていた。しかも岩質が 小さいころころ岩ばかりで、支点が取れない、ロープが使えない状況だった。 滑落停止も効かない何百メートルも続く氷の斜面。疲れて、ボーっとしていて一歩 間違えれば命を落とすといった状況であった。 白馬岳から杓子岳までは傾斜が緩く、地肌や雪も所々出ていたが、杓子南側の 斜面を避けようとし、杓子をトラバースすることにした。ここは雪が足首・膝まで あったところもあり比較的に安定していた。が、トラバース時登りすぎて、結局 南側の悪所を下降することになった。集中して一歩一歩下降した。白馬鑓も アイスクライミングとなっていて、氷斜面になっていた登山道をフロントポインティングで登った。 しかし途中風も強くなり、ロープが使えないことや、桐山の体調を考えれば十分にスピーディーに 進めないことを考えて、このまま進むのが危険すぎると判断した。よって白馬鑓山頂前の2815m 位から引返し、白馬岳へ戻った。
白馬岳を過ぎると風が強かったが道自体が分かりやすかった。大した問題なく白馬大池までおりて、 風が少し弱くなったが雲の色を見てテントの周りに防風壁を雪ブロックで作った。 テントでガソリンのキャップを十分に閉めずに、ガソリンが流出して火事になりそうだった。 銀マットが燃えて、梅酒がこぼれたが、その以外に問題がなくラッキーだった。

朝焼けの白馬高原 雲海の富士山 これは氷だ アイスダウンクライミング

2月23日 曇り

8:30 - 栂池スキー場下 11:30

朝からガスっていて、途中風も吹かなくなってあの世に行ったかと思うほど静かな 真っ白の世界であった。林道について、栂池スキー場を下山した。 スキー場下の温泉を利用し、バスで白馬駅まで行って、買い物してから 静岡に帰った。帰りの電車には、ジャマイカへ行きたいらしい、車内でラップを やっている個性的な青年がいた。

出発準備 真っ白の中の幽霊か スノースコップでスキーを スキー場の変人たち


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